2023年2月9日木曜日

台湾有事③:台湾の政治状況

「台湾危機」が叫ばれているが、その実態は何か。焦点となっている台湾の最近の政治状況を知る資料を探した。台湾の政治を研究している日本の研究者は少なくないが、簡潔に知ることのできるものが欲しい。たどり着いたのが小笠原欣幸氏の以下の2つの文である。

他の人の文も眺めてみたが、近い存在でありながらあまり知られていない台湾の政治状況を、この2つの文から知ることができると考えた。

  1. 台湾政治の長期的変化と蔡英文政権 小笠原 欣幸
  2. 台湾政治概説 - 民主化・台湾化の政治変動 小笠原 欣幸

最初の文献は台湾人の政治的意識と2大政党、民進党と国民党の支持基盤がどうなっているのかが簡略に説明されている。2番目の文献は最初の文献の内容を含めて台湾の歴史を辿りながら台湾の政治史を解説している。2番目の文献を読むことを薦めたい。

香港の雨傘運動に連携して台湾で起こったひまわり運動が台湾の政治状況を変え、それにともない民進党の支持が国民党の支持を圧倒するようになって、蔡英文政権登場した。それ以前には中国は台湾への経済的・人的交流を働きかけて、すこしばかり融和的な両岸関係が続いていた。しかし中国が習近平政権になり、台湾への圧力が強まって現在になっている。

中国からの軍事的圧力を受けてきた台湾はさぞ緊張した状態にあるだろう、と考えるのがわれわれの想像である。しかしそれほどの危機感はないようだ。どうも日米の騒ぎ立てる「台湾危機」はまやかしといってよいよいように思う。

中国は共産主義革命がまだ達成していないと考えている。台湾も、国民党政権が中華民国政府として共産党が大陸を支配する前は、辛亥革命を受け継ぐ中国の政権として存在してきたし、実効支配するのは台湾島とその周辺の島であるが、台湾の憲法では中国全土を統治する正当な政府であることを定めている。どちらも中国の正当な政府であることを主張する2重権力状態が続いている。

だから中国政府は中国を統一するために武力を放棄することができない。すでに中国に統一されているチベット族や満州族、ウィグル族など漢民族以外の民族から反乱が起こることを恐れているのではないだろうか。だから中国を纏めるために武力はひっこめるわけにはいかない、と想像する。

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