2020年10月7日水曜日

軍事研究、学問の自由と日本学術会議

WEB論座にドイツ在住物理学者林正彦氏の一文。学問の自由についてのドイツの人たちの考え方を紹介していて、日本の政権の「民度」の低さがよくわかります。地位協定の問題にも通底していると言って良いでしょう。

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板垣名誉教授に聞いた朝日新聞の記事。学術会議が行っている最も重要な海外アカデミーとの交流事業について述べています。学術会議の予算の大半が国際的な学術団体を支えるために使われています。

日本学術会議が推薦した新会員候補のうち6人を菅義偉首相が除外したことに波紋が広がっている。2003年まで同会議の第1部(人文科学)の部長などを務め、現行制度への改革にも関わった板垣雄三・東大名誉教授(歴史学)=諏訪市在住=は「6人の問題では全くない」と指摘する。何が問題なのか、

学問への介入か 繰り返す慣例破り、問われる政権の姿勢

――板垣さんが日本学術会議の会員だったのは1994年からの9年間でした。

日本学術会議とは。

 日本の研究者全体を代表する組織(アカデミー)です。海外アカデミーとの国際交流協力や、国内諸学会の連携・協業の促進、新領域や研究者のあり方の調査など多面的な活動をしています。「政府の諮問機関」と表現する報道もありましたが、違います。政府に報告・提言するためだけの機関ではありません。

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むかし日本学術会議の会員が選挙で選ばれていたころペイペイの一駆け出しの研究者として一票を投じたことがありました。その後中曽根内閣の時に日本学術会議は学協会の推薦に変えられてしまいました。学術会議が政権の言うことを聞かない存在で、政府の科学技術政策の諮問は学術会議ではなく科学技術会議(その後総合科学技術会議へ、現在は総合科学技術・イノベーション会議と改組)にするようにして学術会議を骨抜きにしていったと記憶しています。科学研究費もご存知のように政府の意向が強く働き重点配分からさらには競争的な配分に変わっていきました。

アベ・スガ政権の人事権を通しての省庁へ支配が強引に進められていったのに学術会議には手を付けることができませんでした。おそらく今回の件では6人の発令拒否にあった人は政権を支持するアベ・スガ信者たちを納得させるターゲットにさせられたのではないかと思います。スガは学術会議も人事権で支配してコントロールしようともくろんでいるのではないでしょうか。(それがうまくいかなければ学術会議法を変えて改組し政府のコントロール下に置けるようにするかもしれません。)今まで学術会議を軽視しし提言を無視してきたので政権の政策に影響を与えることはありませんでしたと誰かが言っていましたが、考えられるのは軍事研究の推進にとって重大な障害になることです。

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軍事研究について一言。防衛省からの補助金を貰うと研究テーマが直接には軍事技術とは遠いテーマであったとしても、年度を重ねるうちに防衛省が補助金を出すテーマに注文が付けられて、次第に軍事技術そのもののテーマに変えられていく懸念が非常に強くなります。一度防衛省からの補助金を貰うと研究を継続していくために研究テーマが防衛省側にコントロールされてしまいます。しかも研究成果を論文として発表する際に防衛省の許可が必要になり、軍事機密ということになると論文として発表ができなくなります。当然その研究者の研究論文のリストからは外され、研究実績になりません。研究者は研究実績によって評価されますので大変に困ったことになります。軍事研究は一旦組み込まれると防衛省から出される研究費によって縛られて研究者を死に至らせる麻薬のようなものです。だから軍事研究の問題点はそれが人を殺すための研究であるという倫理的な問題だけではありません。

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最近の本なのでまだ読んでいませんが池内了「科学者は、なぜ軍事研究に手を染めてはいけないか」(みすず書房)はこの問題を知るうえで好書と思います。

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