2023年2月3日金曜日

台湾有事②:台湾をめぐる米軍+自衛隊 対 中国軍の戦争シミュレーション

2023年1月26日に「米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官が習近平指導部が3期目の任期満了を迎える2027年までに、中国が台湾に侵攻する可能性があるとの見方を示した」、との報道がありました。また最近、米NBCテレビは27日、米軍のマイク・ミニハン空軍大将が内部のメモで、2025年までに中国が台湾に侵攻し、米中戦争が起こり得ると警告したと報じました。

これらはあくまでも日本向けで、しかも両方とも今開かれている国会にむけたものと考えてほぼ間違いないように思います。日本の政権筋がアメリカの軍事筋と結託して、米軍関係者の口から国会と世論をコントロールしようとした行動だと思います。大軍拡を遮二無二押し通すためのアメリカからの情報の「リーク」ですが、米軍が得た機密情報と見せかけているのは間違いないでしょう。日本の国民に向けた日米合作の情報戦という見方をする必要があります。惑わされてはいけないと思います。このような情報を批判することなく無批判に垂れ流す日本のマスコミは強く非難されるべきです。

台湾住民のおよそ80%は現状維持で、残りの約20パーセントが中国との統一と台湾の中国からの独立です。北京政府が神経を尖らせているのがこの少数の独立派です。アメリカがそれをテコに台湾に介入しています。独立派がアメリカと結託して現状維持の台湾を変えようとして軍事行動に出てきたら、武力に訴えることも辞さないというのが北京政府の考えです。

台湾国内の政治情勢については近々別に述べる予定です。

アメリカのシンクタンクCSISが現時点で米軍+自衛隊が台湾をめぐって中国軍と戦争するとどうなるかシミュレーションした報告が出ています。

概要をの部分を読んでみました。大変に図々しいことに米中戦争に自衛隊が米軍と一緒に参戦することにしています。いくつかのシナリオを考えたみたいですが、その多くで米軍が勝利するとしています。(以前の米軍だけの米中戦争のシミュレーションでは殆どのシナリオでアメリカは負けていたと記憶しています。)台湾と日本は戦場になり壊滅的な状況になります。中国本土が大きな戦争の被害を受けるだけでなく、アメリカの兵力も多大な被害を受け、アメリカの世界全体での立場は大幅に後退する。だから、そのようにならないように、アメリカと日本の軍事力を早急に飛躍的に増強する必要がある、と図々しくも主張しています。そこには日本の国民だけでなく台湾や中国本土にどれくらい多大な死者が出るかについては何も触れていません。

政権側が推し進めている大軍拡を阻止することが、台湾危機を抑え、日本が戦争に巻き込まれないようにすることになります。これがこの戦争シミュレーションの結果が我々に教えてくれることです。

エネルギーのある人はリンクから文書をダウンロードして読んでみてください。私はまだ概要の部分しか読みませんでしたが。

なお、UIチャンネルで鳩山由紀夫との対談で須川清司がこのウォーゲームを含めてウォーゲームとはどのようなものかについて解説してくれています。こちらもご覧ください。

以下が報告の概要部分です。

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次の戦争の最初の戦い 中国軍の台湾侵攻を想定したウォーゲーム 著者紹介 マーク・F・カンジアン マシュー・カンシアン エリック・ヘギンボサム

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要旨

中国が台湾への水陸両用侵攻を試みるとどうなるのか?CSISは、中国による台湾への水陸両用侵攻を想定したウォーゲームを開発し、24回実行した。ほとんどのシナリオで、米国/台湾/日本は中国による通常の水陸両用侵攻を破り、台湾の自治を維持することができた。しかし、この防衛には高いコストがかかっていた。米国とその同盟国は、数十隻の艦船、数百機の航空機、数万人の軍人を失った。台湾は経済的な打撃を受けた。さらに、この大きな損失は、長年にわたって米国の世界的な地位を損なった。中国も大きな損失を被り、台湾の占領に失敗すれば、中国共産党の支配が不安定になるかもしれない。したがって、勝利だけでは十分ではない。米国は直ちに抑止力を強化する必要がある。

課題

中国の指導者たちは、台湾を中華人民共和国に統合することを強く主張するようになっている(注1)。米政府高官や民間の専門家は、中国の意図と紛争の可能性について懸念を表明している。中国の計画は不明だが、軍事侵攻はあり得ない話ではなく、中国にとって「台湾問題」の最も危険な解決策となるため、米国の国家安全保障論で注目されるのは当然である。

(注1)このプロジェクトでは、台湾の多くの人々が自らを中国人と考えていることを踏まえ、中華人民共和国を指す言葉として「中国」を使用しています。

米軍にとって「台湾有事はペーシングシナリオ」であるため、そのような侵攻の作戦力学について、共有され、厳密で、透明性のある理解を持つことが重要である(注2) 。この理解が重要なのは、防衛が絶望的である場合と防衛が成功する場合とでは、米国の政策が根本的に異なるからである。もし台湾が米国の援助なしに中国から自らを守ることができるなら、米国の戦略をそのような不測の事態に合わせる理由はない。逆に、米国がいくら援助しても台湾を中国の侵略から救えないのであれば、米国は台湾防衛のために奇想天外な努力をする必要はない。しかし、ある条件下で、ある重要な能力に依存して、米国の介入が侵略を阻止できるのであれば、米国の政策はそれに応じて形成されるべきであろう。そうすれば、そもそも中国が侵略を思いとどまる可能性も高くなる。しかし、このような米国の戦略形成には、政策立案者が問題意識を共有することが必要である。

(注2)Ely Ratner, testimony before the Senate Foreign Relations Committee, “The Future of U.S. Policy on Taiwan,” 117th Cong., 1st sess., 2021, https://www.foreign.senate.gov/hearings/the-future-of-us-policy-ontaiwan120821.

しかし、侵攻の作戦力学とその結果については、その重要性にもかかわらず、厳密でオープンソースの分析が行われていない。これまでの未分類の分析は、侵攻の一面に焦点を当てているか、厳密な構造になっていないか、軍事作戦に焦点を当てていないかのいずれかである。機密扱いのウォーゲームは、一般市民にとって透明性がない。適切な分析がなければ、公開討論は固定されないままである。

そこで、このCSISプロジェクトでは、歴史的データとオペレーションズ・リサーチを用いて、2026年の中国による台湾への水陸両用侵攻をモデル化したウォーゲームを設計した。例えば、中国軍の水陸両用リフトは、ノルマンディー、沖縄、フォークランドを分析したもので、過去の軍事作戦を類推してルールを設計した。また、空港をカバーするために必要な弾道ミサイルの数を決定するなど、理論的な兵器性能のデータに基づいて設計されたルールもある。ほとんどのルールは、この2つの方法を組み合わせたものであった。このように、ウォーゲームの戦闘結果は、個人の判断ではなく、分析に基づいたルールで決定された。また、最初のイテレーションと最後のイテレーションで同じルールが適用され、一貫性が保たれている。

インタビューと文献調査をもとに、主要な前提条件について最も可能性の高い値を組み込んだ「基本シナリオ」を想定。プロジェクトチームは、この基本シナリオを3回実行しました。そして、様々なケースを想定し、その効果を検証した(注3)。 これらの想定が結果に与える影響は、台湾侵攻スコアカード(図8参照)で示される。全部で 24 回の繰り返しにより、紛争の輪郭が描かれ、米国が直面する主要な脅威について首尾一貫した厳密な図式が作成された。

(注3) エクスカーションケースには、最も可能性が高いとは言えないが、もっともらしいと思われる想定が含まれている。

結果

侵攻はいつも同じように始まる。開戦直後の砲撃で、台湾の海軍と空軍のほとんどが破壊された。中国海軍は強力なロケット部隊で台湾を包囲し、包囲された島への船や航空機の輸送を妨害する。何万人もの中国兵が軍の水陸両用船と民間のロールオン、ロールオフ船で海峡を渡り、航空攻撃と空挺部隊がビーチヘッドの後ろに上陸する。

しかし、最も可能性の高い「基本シナリオ」では、中国軍の侵攻はすぐに判明する。中国の大規模な砲撃にもかかわらず、台湾の地上軍は海岸線に流れ込み、侵略者は物資の補給と内陸部への移動に苦心する。一方、米軍の潜水艦、爆撃機、戦闘機、攻撃機は、しばしば日本の自衛隊によって強化され、中国の水陸両用艦隊を急速に麻痺させる。中国が日本の基地や米軍の水上艦船を攻撃しても、この結果を変えることはできない。台湾の自治は維持される。

ここには一つの大きな前提がある。台湾は抵抗しなければならず、降伏してはならない。米軍を投入する前に台湾が降伏してしまえば、あとは無益なことになる。

この防衛には、高いコストがかかる。日米両国は、何十隻もの艦船、何百機もの航空機、そして何千人もの軍人を失う。このような損失は、何年にもわたって米国の世界的地位を損ねることになる。台湾の軍隊は壊れることはないが、著しく劣化し、電気も基本的なサービスもない島で、傷ついた経済を守るために放置されている。中国もまた大きな打撃を受けている。海軍はボロボロで、水陸両用部隊の中核は壊れており、何万人もの兵士が捕虜になっている。

成功の条件

24回のゲームの繰り返しを分析した結果、中国の侵略に打ち勝つためには4つの必要条件があることがわかった。

  1. 台湾軍が戦線を維持すること。

    推奨すること 台湾の地上軍を強化する。中国軍の一部は必ず島に上陸するため、台湾の地上軍はいかなるビーチヘッドも封じ込め、中国の兵站が弱まったところで強力に反撃できなければならない。しかし、台湾の地上軍には大きな弱点がある。そのため、台湾は隊員を補充し、厳しい統合訓練を行わなければならない。陸上部隊は台湾の防衛努力の中心とならなければならない。

  2. 台湾に「ウクライナ・モデル」は存在しない。

    推奨すること:平時には、米台が協力して台湾に必要な兵器を提供しなければならない。戦時には、米国が台湾防衛を決定した場合、米軍は迅速に直接戦闘を行わなければならない。ウクライナ戦争では、米国と北大西洋条約機構(NATO)は、直接戦闘に部隊を派遣していないが、大量の装備と物資をウクライナに送っている。ロシアはこの陸路の流れを阻止することができなかった。しかし、台湾では中国が数週間から数カ月にわたって台湾を孤立させることができるため、「ウクライナ・モデル」を再現することはできない。台湾は必要なものをすべて持って戦争を始めなければならない。さらに、米国による遅延や中途半端な措置は、防衛を困難にし、米国の犠牲者を増やし、中国がより強力な宿営地を作ることを可能にし、エスカレーションのリスクを高めることになる。

  3. 米国は、日本国内の基地を戦闘行為に使用できるようにしなければならない。

    提言: 日本との外交・軍事関係を深める。他の同盟国(オーストラリアや韓国など)も中国との広範な競争において重要であり、台湾の防衛において何らかの役割を果たすかもしれないが、日本が要である。在日米軍基地の使用なしには、米国の戦闘機・攻撃機は効果的に戦争に参加することはできない。

  4. 米国は、中国の防御圏外から中国艦隊を迅速かつ大量に攻撃できるようにしなければならない。

    提言: 長距離対艦巡航ミサイルの兵装を増強する。スタンドオフ対艦ミサイルを発射できる爆撃機は、米国の損失を最小限に抑えながら侵略を撃退する最速の方法である。このようなミサイルを調達し、既存のミサイルをこの対艦能力で改良することが、調達の最優先事項である必要がある。

ピュロスのような勝利を避けるために

勝利がすべてではない。米国はピュロスのような勝利を収め、長期的には「敗れた」中国よりも多くの苦しみを味わうことになるかもしれない。さらに、高コストという認識は抑止力を弱めるかもしれない。もし中国が、米国は台湾防衛の高コストを負担したくないと考えるなら、中国は侵略の危険を冒すかもしれない。したがって、米国は、紛争が発生した場合に、勝利のコストをより低く抑えるための政策やプログラムを導入すべきである。そのような方策には次のようなものがある。

政治と戦略

  • 戦争計画の前提を明確にすること。戦前の台湾や中立国への派兵を前提とした戦争計画と、政治的現実の間にギャップがあるように思われる。

  • 本土攻撃の計画を立ててはならない。核保有国とのエスカレーションによる重大なリスクから、国家司令部が許可を出さない可能性がある。

  • 死傷者が多くても作戦を継続する必要性を認識すること。3週間で、米国はイラクとアフガニスタンでの20年間の戦争と比較して、約半分の死傷者を出すことになる。

  • 台湾の空軍と海兵隊を非対称にする。台湾は、「ヤマアラシ戦略」を採用するとのレトリックがあるものの、国防予算の大半を、中国がすぐに破壊してしまう高価な艦船や航空機に費やしている。

ドクトリンとポスチャー

  • 日本・グアムの航空基地を強化・拡充する。分散・強化により、ミサイル攻撃の影響を軽減する。

  • 地上での航空機の生存能力を高めるため、米空軍のドクトリンを改訂し、調達を再構築する。航空機の損失の90%は地上で発生している。

  • 中国本土の上空を飛行する計画を立ててはならない。中国本土の防空は強力であり、目標達成に時間がかかり、台湾周辺での航空任務が優先される。

  • 海兵隊沿岸連隊や陸軍多領域任務部隊の限界を認識し、その人数に上限を設ける。これらの部隊は中国に対抗するために作られたものであり、ある程度の価値はあるが、政治的、作戦的な困難からその有用性には限界がある。

  • 脆弱性を生むような危機的展開は避ける。軍事ドクトリンでは、危機の際に抑止力を高めるために前方展開することを求めているが、こうした部隊は魅力的なターゲットとなる。

兵器とプラットフォーム

  • より小型で生存性の高い艦船にシフトし、不具合のある艦船や複数の沈没に対処するための救助メカニズムを開発する。水上艦は非常に脆弱であり、ゲームの反復において、米国は通常2隻の空母と10~20隻の大型水上戦闘艦を失う。

  • 潜水艦とその他の海底プラットフォームを優先させる。潜水艦は中国の防衛圏に侵入し、中国艦隊に大打撃を与えることができましたが、数は十分ではありません。

  • 極超音速兵器の開発と配備を継続するが、ニッチな兵器であることを認識する。極超音速兵器はコストが高いため、在庫に限りがあり、膨大な数の中国空軍と海軍のプラットフォームに対抗するには数量が不足する。

  • 戦闘機よりも爆撃機の維持を優先させる。爆撃機の航続距離、ミサイルのスタンドオフ距離、高い搭載能力は、人民解放軍に困難な課題を突きつけた。

  • より安価な戦闘機を増産し、ステルス機の取得と非ステルス機の生産をバランスよく行う。紛争初期に多くの航空機が失われたため、空軍は戦闘機・攻撃機が不足し、損失を維持できる十分な戦力がない限り、紛争の二の舞になる危険性がある。

最後に、このプロジェクトとその提言には、いくつかの注意点がある。侵略のモデル化は、それが不可避である、あるいは可能性が高いということを意味するものではない。中国指導部は台湾に対し、外交的孤立、グレーゾーンでの圧力、経済的強制といった戦略を取るかもしれない。仮に中国が軍事力を選択したとしても、それは完全な侵略ではなく、封鎖の形を取るかもしれない。しかし、侵略のリスクは十分に現実的であり、破壊的な可能性があるため、分析する価値はある。

このプロジェクトは、台湾防衛のメリットが将来のコストを上回るのか、あるいはそのコストとメリットをどのように比較検討するのか、といった立場をとるものではない。むしろ、この重要な国家安全保障上の課題に対して、国民がより良い情報を得た上で意思決定できるようにするために、国民的議論を深めることを目的としている。

2023年2月2日木曜日

台湾有事①:台湾問題と中国共産党第20回大会

台湾危機が叫ばれているが、習近平政権は台湾を武力統一する方針を持っているだろうか。武力統一をするならいつどんな状況の下で実行するだろうか。以下は中国共産党第20回全国代表大会報告の台湾に関する一部である。それを読むと必ずしもそのような方針を持ってはいないと読める。武力統一に乗り出すかもしれないのは、台湾が中国からの独立を鮮明にして、台湾も憲法で認めている一つの中国から逸脱するときがきたら、ということだ。中国のこれほどの基本文書で決めたことを大嘘をつくことがあるだろうか。そうならまず第一に中国国民に対する裏切りであるし、近隣諸国や世界全体に対しても裏切ることになってしまう。そのような政権は持たないだろう。以下にその部分を示す。

過去5年間の総括の部分

一 過去五年の活動と 新時代の一〇年の偉大な変革

揺れ動く香港の情勢を前に、われわれは特別行政区に対する全面的な管轄統治権を憲法と基本法に則って効果的に運用し、香港特別行政区国家安全維持法を制定・実施し、「愛国者による香港統治」の原則を徹底したことで、香港の情勢が混乱から安泰へと大きな転換を遂げた。粤港澳(広東・香港・澳門)大湾区建設をいっそう進め、香港と澳門の経済発展、民生改善、安定維持を支援した。「台湾独立」勢力による分裂活動と外部勢力による台湾の事柄への干渉というゆゆしき挑発を前に、われわれは徹底して分裂反対・干渉反対の重要な闘争を展開し、国家の主権と領土保全を守って「台湾独立」に反対するわれわれの確固たる決意と強大な能力を示し、祖国の完全統一を実現する戦略的主導権をいっそう強く握り、一つの中国を認める国際社会の枠組みをいっそう強固なものにした。国際情勢の急激な変化を前に、とりわけ外部からの威嚇、抑制、封鎖、極限の圧力を前に、われわれは国益を重視して国内政治を優先させることを堅持し、戦略的不動心を保ち、闘争精神を発揚し、強権を恐れないという確固たる意志を示し、闘争の中で国家の尊厳と核心的利益を守り、わが国の発展と安全の主導権をしっかりと握った。この五年、わが党は人民を団結させ率いて、長年解決できなかった数多くの難題を克服し、未来にかかわる数多くの大事・要事を成し遂げ、党と国家の事業において世界の注目を集める大きな成果を収めた。

われわれは「一国二制度」の実践を全面的かつ正確に推し進め、「一国二制度」、「香港住民による香港統治」、「澳門住民による澳門統治」、高度の自治という方針を堅持し、香港が「混乱から安泰へ、安泰から興隆へ」の新段階に入るよう推し進めて、香港、澳門は長期的で安定した発展という好ましい状態を保った。われわれは新時代における台湾問題解決の基本方策をうち出し、両岸の交流・協力を促し、「台湾独立」分裂活動に断固として反対し、外部勢力からの干渉に断固として反対し、両岸関係の主導権と主動権をしっかりと握った。

続いてこれから5年間の方針の部分。

一三 「一国二制度」を堅持・祖国の統一を推進する

「一国二制度」は中国の特色ある社会主義の偉大な壮挙であり、祖国復帰後の香港・澳門の長期的な繁栄・安定を保つ最善の制度的取り決めであるため、長期的に堅持しなければならない。

 

「一国二制度」、「香港住民による香港統治」、「澳門住民による澳門統治」、高度の自治という方針を全面的かつ正確に、揺るぐことなく貫徹し、法に基づく香港統治・澳門統治を堅持し、憲法と基本法で定められた特別行政区の憲制秩序を守る。「一国二制度」の制度体系を堅持・整備し、中央の全面的な管轄統治権を徹底し、「愛国者による香港統治」と「愛国者による澳門統治」の原則を徹底し、特別行政区の国家安全維持のための法律・制度と執行メカニズムをしっかり運用する。中央の全面的な管轄統治権と特別高度な自治権の保障の統一を堅持し、行政主導を堅持し、特別行政区の行政長官と政府による法に基づく施政を後押しし、全面的統治の能力と管轄統治向上させ、特別行政区の司法制度と法律体系を整備し、香港・澳門の資本主義制度と生活様式を長期的に保ち、香港・澳門の長期的な繁栄・安定を促進する。

 

香港・澳門が経済発展、民生改善をはかり経済・社会の発展における根深い矛盾と問題を解決するよう後押しする。香港・澳門の優位性と特徴を発揮させ、国際金融や貿易、水運・航空、イノベーション・科学技術、文化・観光などの分野における香港・澳門の地位をうち固め向上させ、香港・澳門と各国各地域とのより開かれた、より緊密な交流・協力を深化させる。粤港澳大湾区建設を推進し、香港・澳門が国家の発展の大局にいっそう融け込み、中華民族の偉大な復興の実現のためによりよく役割を果たすようサポートする。

 

祖国を愛し香港を愛し澳門を愛する勢力をいっそう拡大し、香港・澳門の同胞の愛国精神を高め、「一国二制度」を支持するより幅広い国内外の統一戦線を結成する。中国反対・香港撹乱・澳門撹乱勢力を断固として取り締まり、香港・澳門の事柄に対する外部勢力からの干渉を断固として防ぎ、食い止める。

 

台湾問題を解決して祖国の完全統一を実現することは中国共産党の確固不動の歴史的任務であり、すべての中華民族の人々の共通の願いであり、中華民族の偉大な復興を実現する上での必然的要請である。新時代における党の台湾問題解決の基本方策の貫徹を堅持し、両岸関係の主導権と主動権をしっかりと握り、祖国統一の大業を揺るぐことなく推進する。

 

「平和的統一、一国二制度」の方針は両岸の統一を実現する最善の方式であり、両岸の同胞および中華民族にとって最も有利である。われわれは一つの中国の原則と「九二年コンセンサス」を堅持し、それを踏まえて、台湾の各党派、各業界、各階層人士と、両岸関係・国家統一について幅広く踏み込んで協議し、共同で両岸関係の平和的発展と祖国の平和的統一のプロセスを推進していく。広範な台湾同胞との連帯を堅持し、祖国を愛し統一を目指す台湾島内の人々を揺るぎなく支持し、共同で歴史的大勢を把握し、民族の大義を堅持し、「台湾独立」に断固反対し祖国統一を揺るぐことなく促進する。偉大な祖国は永遠に祖国を愛し統一を目指すすべての人々の強固な後ろ盾である。

 

両岸同胞は血のつながった「血は水よりも濃い」家族である。われわれは終始台湾同胞を尊重し思いやり、彼らに幸福をもたらしている。引き続き両岸の経済・文化の交流協力を促進し両岸の各分野の融合発展を深化させ、台湾同胞の福祉増進につながる制度と政を充実させ、両岸がともに中華文化を発揚するよう推進し、両岸同胞の心の通い合いを促すことに力を注いでいく。

 

台湾は中国の台湾である。台湾問題の解決は中国自身のことであるため、中国人自身で決めるべきでる。われわれは、最大の誠意をもって、最大の努力を尽くして平和的統一の未来を実現しようとしているが、決して武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必な措置をとるという選択肢を残す。その対象は外部力からの干渉とごく少数の「台湾独立」分裂勢力おびその分裂活動であり、決して広範な台湾同胞に向けたものではない。国家統一・民族復興という歴史の輪は着々と前へ進んでおり、祖国の完全統一は必ず現しなければならず、必ず実現できるのである。

 

文章を読むとわかるように、習近平政権がいう「一国二制度」は、統治権は北京政府が持つが、その許容範囲で自治を認める、ということ。中国という一つの国が内部に並立する2つの政権を認めるということでは全くない。香港はその方針に基づいて対処し、民主主義を主張する勢力を弾圧して一掃した。これでは台湾の人々が受け入れるわけがない。しかし、香港でやったように警察力や武力をもって台湾を平定しようという方針ではない。文章からは、台湾との統一は台湾の各党派・各業界・各層との合意形成をし、経済的なつながりを重視して、平和的な統一を目指すことを述べている。ただし、中国からの台湾の独立を主張する一部の勢力には反対し、彼らの動向によっては武力統一の排除はしない。台湾で独立派と目されている人は全体の2割以下ほどしかいないし、全体の8割に近い台湾の人々は現状維持を望んでいるので、習近平政権が近々台湾の武力統一をするだろう、などというのは虚妄としか言いようがない。尤も台湾に対する経済的な浸透は習近平政権になってからは必ずしも思惑どおりにはない出来ていない、という指摘が研究者から出ている。台湾を「一国二制度」のもとに中国に組み入れたいと中国は考えているが、だからと言って習近平政権が武力をもってすぐにでも台湾を武力統一しようとしている、という情報はいったいどこから出てきたのだろうか。

「ここで思い出すのは2021年の日米首脳会談の前の3月、前米インド太平洋軍司令官のデービッドソン海軍大将が米上院軍事委員会で、『中国軍が27年までに台湾に侵攻する可能性がある』とあらためて述べた証言。証言時期から判断すれば、その狙いが、日米首脳会談に向けて台湾有事を緊急課題にし、日米安保の性格変更の「地ならし」と、対日世論工作にあったことが分かる。」(岡田充) 一般の人が知らない軍事機密情報に見せかけて、ありそうもない台湾危機をでっち上げて発表したと思われることだ。日本の政権側もそれに乗って国内向けに台湾危機を言い募り、「それは大変なことだ」と国民に思わせ、敵基地攻撃体制をつくる大軍拡に乗り出した。しかも日本側がそのようなコメントを出すように米国側、米軍側に嗾けたのではないかとさえ疑われる。このような謀略に対してはかつての柳条湖事件や*トンキン湾事件、イラク戦争などが想起される。だからむしろ、アメリカと日本が中国との戦争を嗾けることのほうがありそうに思う。

*柳条湖事件:1931年9月18日夜、中国東北部の奉天(今日の瀋陽)近郊の柳条湖付近で南満州鉄道(満鉄)の線路を関東軍がみずから爆破したのを、中国軍の仕業と謀略的にウソをいい、それを機に中国軍を襲った事件で、日本が中国東北部への侵略(満州事変)を始めたきっかけになった。

*トンキン湾事件:1964年8月、北ベトナム沖のトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇がアメリカ海軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したとされる事件。これをきっかけに、アメリカは本格的にベトナム戦争に介入、北爆を開始した。しかし後の1970年にこの事件はアメリカが作り上げた虚偽であることが判明した。

*イラク戦争:アメリカが主体となり、2003年3月20日からイギリス、オーストラリア、ポーランドが加わる有志連合によって、サダム・フセインのイラクが大量破壊兵器を保持しているとして武装解除をするという理由を建てて『イラクの自由作戦』の名の下に、イラクへ侵攻したことで始まった軍事介入。イラクには大量破壊兵器などなかったことが後に判明。

自由航行作戦と称して台湾海峡をアメリカの艦艇が通行したり、ペロシ下院議長やアメリカの議員団が台湾を訪問するなどしている。それに対して中国軍も台湾の周りで軍事演習をして応戦しているが、台湾の民意はどうなっているのだろうか。

2021年10月5日火曜日

猿田佐世さん(ND事務局長・弁護士)の講演

外交のしくみを紐解く -安保・原発・TPP・沖縄基地と日米関係の実像-

講演:猿田佐世(ND事務局長・弁護士)

アメリカ政界の知日派(ジャパンハンドラー)とは何者なのか。彼らはどのような人物で、どのようにして我が国の政治に深く関わることができてきたのか。我が国の対米従属の驚くべき実態を明らかにしている。

2021年9月15日水曜日

麻生太郎発言について

7月35日付けの「米中対立は日本の政権が積極的に煽っているのか?」と9月11日付けの「台湾有事は切迫しているか?」に続いて、極めて危険な麻生太郎発言を追う。

麻生氏は7月5日の講演で、台湾海峡情勢をめぐり「大きな問題が起き、日本にとって『次は』となれば、存立危機事態に関係してくるといってもおかしくない。日米で一緒に台湾の防衛をやらないといけない」と述べた。例えば朝日新聞の記事

これに対し、中国外務省の趙立堅副報道局長は6日の定例会見で、麻生太郎副総理兼財務相が、台湾海峡情勢が悪化した場合に集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたる可能性に言及したことについて、「強烈な不満と断固とした反対」を表明し、日本側に抗議したと明らかにした。朝日新聞7月8日の記事

また、駐日中国大使館報道官も、日本政府要人の台湾に関する誤った発言を強く批判した。在日中国大使館のWebページ

前トランプ政権の時期だが、『米軍、中国に「攻撃せず」と連絡 トランプ氏暴走に懸念』という最近の琉球新報の報道が最近あった。トランプが暴走したらアメリカは困るのだが、日本の自公右翼政権の暴走こそ危険極まりないだろう。

もちろん麻生発言は単なる妄言ではない。浅井基文氏の文が参考になる。

憲法共同センターも麻生発言に対する批判的談話を発表している。
一日もはやく「戦争法(安保関連法)」の廃止を -麻生副総理の憲法を逸脱する「台湾有事『日米で防衛』発言」に抗議する -(談話)

中国が明日にでも台湾の武力統一しかねないような麻生発言は、国民に現在の中台関係の実態を歪曲して危機感を煽るものであり、安保法制に陽の光を浴びさせようとするとともに、いっそうの軍国主義化を図り、自衛隊の南西諸島への武力増強と防衛費の大幅増加をもくろんだものだろう。そもそも台湾の政権から事態が切迫しているなどとの表明は出ていない。

松田康博氏(東大教授)は、アジア政治外交史、東アジア国際政治研究、中国および台湾の政治・対外関係・安全保障、中台関係論、日本の外交・安全保障政策の専門家。台湾の政治家とも非常に関係の深い保守的な研究者のようだが、台湾問題を知るうえで傾聴に値する。

「中国は台湾を武力統一するつもりなのでしょうか。」という質問に対して「中国が台湾に対して武力統一を仕掛ける蓋然性は当面極めて低いと思います。能力が足りず、今後10年くらいは考えにくいでしょう。」(松田教授)と答えているのが注目される。出典はここ

また、松田教授が日本記者クラブで行った2つの公演

  1. 『「米中争覇」(6) 台湾総統選と米中対立』(2019年10月10日)
  2. 『「蔡英文の台湾」② 2016.6.27』
が、われわれがあまり知らない台湾の北京との関係を知るために参考になるだろう。

2021年9月11日土曜日

台湾有事は切迫しているか?

共同通信客員論説委員の岡田充がメールマガジン「オルタ広場」に投稿した論文で台湾問題に関する随分参考になる論考を展開していて興味深い。氏の他の論文についても一読する必要がありそうだ。