2023年5月7日日曜日

2023年3月12日日曜日

台湾有事⑥:中国全人代2023年

「人民網日本語版」2023年3月6日は全人代で示された台湾政策に関する部分を次の様に報道している。

昨年(2022年)の中国共産党第20回全国代表大会の報告よりも一層台湾の平和的統一を強調しているのが目に付く。

台湾地区関連の表現から読み取れる3つの意味

人民網日本語版 2023年03月06日16:55

李克強総理は5日、第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議で政府活動報告を行った。大会に出席・列席した全人代代表、中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)委員は、「同報告の台湾地区に関する表現に示された指導思想は明確で、提起された方法は揺るぎなく実務的であり、大陸部の対台湾地区政策における3つの意味を体現している」との見方を示した。中国新聞社が伝えた。

台湾地区に関する大陸部の政策の方針が成熟・安定

2022年の政府活動報告には、「新時代における党の台湾問題解決の総合的方策を貫徹する」との表現があり、今年の報告でもこの点が改めて述べられている。

全国政協委員を務める中華全国台湾同胞聯誼会の楊毅周副会長は、「このことは、大陸部の台湾地区に対する政策の方針がすでに成熟し、安定したこと、新時代における党の台湾問題解決の全体プランが対台湾地区政策における最高の指導思想となったことを示している。新時代の新たな道のりの上で、台湾問題を解決し、祖国の完全統一を推進するには、新時代における党の台湾問題解決の総合的方策を堅持しなければならない」と述べた。

平和的方法による台湾問題の解決を強調

政府活動報告は、1つの中国の原則と「92年コンセンサス」を堅持し、「台湾独立」反対と統一促進を堅持し、両岸関係の平和的発展を推進し、祖国の平和的統一プロセスを推進する方針を示した。

両岸関係がますます複雑になり厳しさを増す状況の中、楊氏は「大陸部が両岸関係の平和的発展推進、祖国の平和的統一プロセス推進を堅持することは、揺るぎない信念、十分な自信、十分な能力によって両岸関係の平和的発展を確保しようとする大陸部の姿勢を示している」と述べた。

楊氏は、「同報告は『平和』を強調して、明確なシグナルを発信している。(台湾地区の)民進党は大陸部の並大抵でない心配りを理解して、『92年コンセンサス』の政治的基礎に立ち返り、『台湾独立』の立場を放棄すべきだ」と強調した。

両岸各分野の融合発展を引き続き深化

全人代代表を務める江蘇省台湾同胞聯誼会の鄒振球会長は、「同報告が『両岸の経済文化交流協力の促進』を提起したことが深く印象に残った。ここ数年、両岸交流情勢は台湾同胞が望むようなものではなかった。今年に入ってから、両岸の民間交流は回復したが、それでも十分というにはほど遠い」と述べた鄒氏は、「大陸部は両岸の経済交流協力をたゆまず推進し、過去5年間に台湾同胞・台湾企業に恩恵が及ぶ多くの措置を相次いで打ち出した。最新の台湾地区に関する記述から、より多くの台湾同胞に中国式現代化建設に加わってもらうにはどうすればよいかを大陸部が常に考えていることがわかる」と述べた。

また楊氏は、「同報告は『台湾同胞の幸福増進のための制度・政策を整備する』ことを強調している。これは、両岸の融合発展の深化に努力し、台湾同胞が(大陸部)と同等の待遇を受けられ、中華民族の偉大な復興のメリットを共に享受できるようにしていくということだ」との見方を示した。(編集KS)

2023年2月19日日曜日

台湾有事⑤:台湾と中国本土の経済関係

台湾と中国の経済関係は極めて強い。台湾は半導体などの電子部品や電子機器の製造(国)である。中国本土はそれらに頼っている。つまり中国本土の電子機器の製造業にとって、台湾は重要なサプライチェーンとなっている。台湾の経済にとって中国本土からの観光客も重要な部分をなしているが、祭英文政権になってからは中国は台湾への観光客数を規制している傾向にあると言われている。

ニッセイ基礎研究所の基礎研レター「台湾問題で押さえておきたい中台の経済関係」(経済研究部 上席研究員 三尾 幸吉郎)は簡潔で比較的わかりやすいので、以下にその要約を示す。

要約

台湾経済には外需依存度が高いという特徴がある。 国内総生産(GDP)の需要構成を見ると、個人消費は44.7%、政府消費は13.5%と、それぞれ世界平均を下回り、総固定資本形成(≒投資)も26.0%と世界平均並みで内需の弱さが目立つ。 一方、純輸出(含む在庫変動)は15.8%もある。 電子工業、情報通信、化学工業などが盛んで、特に半導体に関しては米国などからの受託生産で力を付け、世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)を擁す。 台湾の輸出先を見ると、中国本土が全体の3割弱を占め、香港を含めると4割を超える。 輸入元として見ても中国本土は、全体の2割強を占め、日本を上回り、米国の2倍超のシェアがある。 中国本土から見ても台湾は有力な貿易相手で、特に輸入元としては最重要である。 それでは、台湾と中国本土はどんなモノを貿易しているのだろうか。 中国本土が台湾から輸入しているモノを見ると、「電気機器・部品」が約7割と飛び抜けている。 台湾にとって中国本土は極めて重要な投資先でもある。

中国の習近平政権が台湾に対して繰り返し軍事的威圧を加えているという報道がしばしばあるが、報道で知る限りでは、米軍が台湾近海で共同軍事演習を行ったり、ペロシ下院議長やアメリカ議員団が台湾を訪問したときなど米国の要人が台湾を訪れた際に中国がそれに反発して軍事演習を行ったときのように思う。

2023年2月18日土曜日

台湾有事④:蔡英文政権における中台関係

日本のマスコミは、「台湾危機」が迫っていて中国が台湾に武力侵攻するようなことになれば、日本は「存立危機事態」に落ち入り大変なことになる、と日本国民を不安に陥れる自公政府やアメリカの報道ばかりを頻りに報道し、大軍拡を批判的に取り上げるようなことは何もしないし、国民が考えて判断できる情報を何も与えてくれない。だから現在の中台関係を知っておくことは非常に重要なことである。

専門家ではない人間が中台関係について知るには、残念ながら、十分な情報があるとは言えないが、以下の論文が適当だろうと思い、目を通してみた。

要約

蔡英文政権における中台関係の緊張とジレンマ
立命館国際地域研究
駒見一善

2016年の台湾総統選挙で蔡英文・民進党候補が当選し、同年5月に蔡英文政権が発足した。 中国と一定の距離を置く対中政策を主張する蔡英文政権の誕生で、中台関係は新しい段階に入った。 蔡英文政権は、政権運営にあたって台湾人の大多数が中国と台湾の「統一独立」について「現状維持」を求めていることを踏まえ、「現状維持」を前提に中台関係の安定を求める姿勢を示した。 蔡英文総統が就任演説で示した中台関係に対する基本姿勢は、中台がともに「一つの中国」に属することを前提している「中華民国憲法」に基づく現行憲政体制の維持することであり、直接的な言及を避けつつも「1992年に両岸の両会が相互理解と求同存異との政治的姿勢を堅持し、意思疎通の話し合いを行い、若干の共通の認識と了解に達しており、私はこの歴史的事実を尊重する」という言葉を通じて、「92年コンセンサス」が生まれたとされる1992年の中台交渉に関わる事実関係について尊重する姿勢を示し、中国側に一程度の配慮を示した表現と見ることができる。 しかし、中国側の反応は書き終えていない未完成の答案」との認識を示し、「92年コンセンサス」を正面からは受け入れない蔡英文総統の曖昧な姿勢に不満を表明した。 台湾人の「統一独立」問題について「現状維持」を求める声が最も多く、「独立」、「統一」ともに少数派である。 蔡英文政権は、中国との一定の距離を保ちつつ、中国からの切り崩しはますます強化される中で、中台関係の安定を図り、「現状維持」を守っていかなければならない。 一方、中国は蔡英文政権に対して「92年コンセンサス」の直接的な表現での受入を求めており、中台関係における主導権を握り、台湾に対して様々な圧力をかけている。 中国には、蔡英文政権に「92年コンセンサス」を直接的に受け入れさせ、「平和統一」に向けて具体的で有効な手段がないことも露呈された。 2018年11月24日、蔡英文政権の「中間テスト」と目され、2020年総統選挙の前哨戦となる台湾統一地方選挙が行われ、与党民進党は、現有の13県市長のポストを6に減らす大敗となった。

中国は国民党の馬英九政権のときは政府間の交流とともに経済的な交流も推し進めたが、民進党の蔡英文政権になると、馬英九政権のときに両政府が一つの中国を認めた「92年コンセンサス」を蔡英文政権があいまいにしている、と非難し政府間交流は止まったが経済交流は拡大している。民進党政権が台湾を独立させるには、中華民国憲法を改定せざるを得ず、国民の大多数が現状維持を望んでいる状態では、台湾独立を主張出来ないでいる。

だから中国は台湾に様々な圧力を掛けて「いじめ」るが、中国軍が台湾に武力侵攻するような状態ではない。

むしろ考えられるのは、アメリカと日本が意図的な軍事衝突引き起こし、「台湾危機」を演出し挑発することだ。

そのような目論みを打ち砕き日本の平和を維持するには、大軍拡にたいする批判を日本国民のあいだに少しでも拡げて、侵略軍に変貌しつつある自衛隊に憲法を守らせて、専守防衛に引き戻させることだろう。戦争シミュレーションでは自衛隊が加わらないと米中戦争はアメリカが負け、米中戦争もできなくなる。

中国と台湾の経済がいかに強い関係にあるかを示す中台の貿易統計については、後日触れることにする。

2023年2月9日木曜日

台湾有事③:台湾の政治状況

「台湾危機」が叫ばれているが、その実態は何か。焦点となっている台湾の最近の政治状況を知る資料を探した。台湾の政治を研究している日本の研究者は少なくないが、簡潔に知ることのできるものが欲しい。たどり着いたのが小笠原欣幸氏の以下の2つの文である。

他の人の文も眺めてみたが、近い存在でありながらあまり知られていない台湾の政治状況を、この2つの文から知ることができると考えた。

  1. 台湾政治の長期的変化と蔡英文政権 小笠原 欣幸
  2. 台湾政治概説 - 民主化・台湾化の政治変動 小笠原 欣幸

最初の文献は台湾人の政治的意識と2大政党、民進党と国民党の支持基盤がどうなっているのかが簡略に説明されている。2番目の文献は最初の文献の内容を含めて台湾の歴史を辿りながら台湾の政治史を解説している。2番目の文献を読むことを薦めたい。

香港の雨傘運動に連携して台湾で起こったひまわり運動が台湾の政治状況を変え、それにともない民進党の支持が国民党の支持を圧倒するようになって、蔡英文政権登場した。それ以前には中国は台湾への経済的・人的交流を働きかけて、すこしばかり融和的な両岸関係が続いていた。しかし中国が習近平政権になり、台湾への圧力が強まって現在になっている。

中国からの軍事的圧力を受けてきた台湾はさぞ緊張した状態にあるだろう、と考えるのがわれわれの想像である。しかしそれほどの危機感はないようだ。どうも日米の騒ぎ立てる「台湾危機」はまやかしといってよいよいように思う。

中国は共産主義革命がまだ達成していないと考えている。台湾も、国民党政権が中華民国政府として共産党が大陸を支配する前は、辛亥革命を受け継ぐ中国の政権として存在してきたし、実効支配するのは台湾島とその周辺の島であるが、台湾の憲法では中国全土を統治する正当な政府であることを定めている。どちらも中国の正当な政府であることを主張する2重権力状態が続いている。

だから中国政府は中国を統一するために武力を放棄することができない。すでに中国に統一されているチベット族や満州族、ウィグル族など漢民族以外の民族から反乱が起こることを恐れているのではないだろうか。だから中国を纏めるために武力はひっこめるわけにはいかない、と想像する。

2023年2月3日金曜日

台湾有事②:台湾をめぐる米軍+自衛隊 対 中国軍の戦争シミュレーション

2023年1月26日に「米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官が習近平指導部が3期目の任期満了を迎える2027年までに、中国が台湾に侵攻する可能性があるとの見方を示した」、との報道がありました。また最近、米NBCテレビは27日、米軍のマイク・ミニハン空軍大将が内部のメモで、2025年までに中国が台湾に侵攻し、米中戦争が起こり得ると警告したと報じました。

これらはあくまでも日本向けで、しかも両方とも今開かれている国会にむけたものと考えてほぼ間違いないように思います。日本の政権筋がアメリカの軍事筋と結託して、米軍関係者の口から国会と世論をコントロールしようとした行動だと思います。大軍拡を遮二無二押し通すためのアメリカからの情報の「リーク」ですが、米軍が得た機密情報と見せかけているのは間違いないでしょう。日本の国民に向けた日米合作の情報戦という見方をする必要があります。惑わされてはいけないと思います。このような情報を批判することなく無批判に垂れ流す日本のマスコミは強く非難されるべきです。

台湾住民のおよそ80%は現状維持で、残りの約20パーセントが中国との統一と台湾の中国からの独立です。北京政府が神経を尖らせているのがこの少数の独立派です。アメリカがそれをテコに台湾に介入しています。独立派がアメリカと結託して現状維持の台湾を変えようとして軍事行動に出てきたら、武力に訴えることも辞さないというのが北京政府の考えです。

台湾国内の政治情勢については近々別に述べる予定です。

アメリカのシンクタンクCSISが現時点で米軍+自衛隊が台湾をめぐって中国軍と戦争するとどうなるかシミュレーションした報告が出ています。

概要をの部分を読んでみました。大変に図々しいことに米中戦争に自衛隊が米軍と一緒に参戦することにしています。いくつかのシナリオを考えたみたいですが、その多くで米軍が勝利するとしています。(以前の米軍だけの米中戦争のシミュレーションでは殆どのシナリオでアメリカは負けていたと記憶しています。)台湾と日本は戦場になり壊滅的な状況になります。中国本土が大きな戦争の被害を受けるだけでなく、アメリカの兵力も多大な被害を受け、アメリカの世界全体での立場は大幅に後退する。だから、そのようにならないように、アメリカと日本の軍事力を早急に飛躍的に増強する必要がある、と図々しくも主張しています。そこには日本の国民だけでなく台湾や中国本土にどれくらい多大な死者が出るかについては何も触れていません。

政権側が推し進めている大軍拡を阻止することが、台湾危機を抑え、日本が戦争に巻き込まれないようにすることになります。これがこの戦争シミュレーションの結果が我々に教えてくれることです。

エネルギーのある人はリンクから文書をダウンロードして読んでみてください。私はまだ概要の部分しか読みませんでしたが。

なお、UIチャンネルで鳩山由紀夫との対談で須川清司がこのウォーゲームを含めてウォーゲームとはどのようなものかについて解説してくれています。こちらもご覧ください。

以下が報告の概要部分です。

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次の戦争の最初の戦い 中国軍の台湾侵攻を想定したウォーゲーム 著者紹介 マーク・F・カンジアン マシュー・カンシアン エリック・ヘギンボサム

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要旨

中国が台湾への水陸両用侵攻を試みるとどうなるのか?CSISは、中国による台湾への水陸両用侵攻を想定したウォーゲームを開発し、24回実行した。ほとんどのシナリオで、米国/台湾/日本は中国による通常の水陸両用侵攻を破り、台湾の自治を維持することができた。しかし、この防衛には高いコストがかかっていた。米国とその同盟国は、数十隻の艦船、数百機の航空機、数万人の軍人を失った。台湾は経済的な打撃を受けた。さらに、この大きな損失は、長年にわたって米国の世界的な地位を損なった。中国も大きな損失を被り、台湾の占領に失敗すれば、中国共産党の支配が不安定になるかもしれない。したがって、勝利だけでは十分ではない。米国は直ちに抑止力を強化する必要がある。

課題

中国の指導者たちは、台湾を中華人民共和国に統合することを強く主張するようになっている(注1)。米政府高官や民間の専門家は、中国の意図と紛争の可能性について懸念を表明している。中国の計画は不明だが、軍事侵攻はあり得ない話ではなく、中国にとって「台湾問題」の最も危険な解決策となるため、米国の国家安全保障論で注目されるのは当然である。

(注1)このプロジェクトでは、台湾の多くの人々が自らを中国人と考えていることを踏まえ、中華人民共和国を指す言葉として「中国」を使用しています。

米軍にとって「台湾有事はペーシングシナリオ」であるため、そのような侵攻の作戦力学について、共有され、厳密で、透明性のある理解を持つことが重要である(注2) 。この理解が重要なのは、防衛が絶望的である場合と防衛が成功する場合とでは、米国の政策が根本的に異なるからである。もし台湾が米国の援助なしに中国から自らを守ることができるなら、米国の戦略をそのような不測の事態に合わせる理由はない。逆に、米国がいくら援助しても台湾を中国の侵略から救えないのであれば、米国は台湾防衛のために奇想天外な努力をする必要はない。しかし、ある条件下で、ある重要な能力に依存して、米国の介入が侵略を阻止できるのであれば、米国の政策はそれに応じて形成されるべきであろう。そうすれば、そもそも中国が侵略を思いとどまる可能性も高くなる。しかし、このような米国の戦略形成には、政策立案者が問題意識を共有することが必要である。

(注2)Ely Ratner, testimony before the Senate Foreign Relations Committee, “The Future of U.S. Policy on Taiwan,” 117th Cong., 1st sess., 2021, https://www.foreign.senate.gov/hearings/the-future-of-us-policy-ontaiwan120821.

しかし、侵攻の作戦力学とその結果については、その重要性にもかかわらず、厳密でオープンソースの分析が行われていない。これまでの未分類の分析は、侵攻の一面に焦点を当てているか、厳密な構造になっていないか、軍事作戦に焦点を当てていないかのいずれかである。機密扱いのウォーゲームは、一般市民にとって透明性がない。適切な分析がなければ、公開討論は固定されないままである。

そこで、このCSISプロジェクトでは、歴史的データとオペレーションズ・リサーチを用いて、2026年の中国による台湾への水陸両用侵攻をモデル化したウォーゲームを設計した。例えば、中国軍の水陸両用リフトは、ノルマンディー、沖縄、フォークランドを分析したもので、過去の軍事作戦を類推してルールを設計した。また、空港をカバーするために必要な弾道ミサイルの数を決定するなど、理論的な兵器性能のデータに基づいて設計されたルールもある。ほとんどのルールは、この2つの方法を組み合わせたものであった。このように、ウォーゲームの戦闘結果は、個人の判断ではなく、分析に基づいたルールで決定された。また、最初のイテレーションと最後のイテレーションで同じルールが適用され、一貫性が保たれている。

インタビューと文献調査をもとに、主要な前提条件について最も可能性の高い値を組み込んだ「基本シナリオ」を想定。プロジェクトチームは、この基本シナリオを3回実行しました。そして、様々なケースを想定し、その効果を検証した(注3)。 これらの想定が結果に与える影響は、台湾侵攻スコアカード(図8参照)で示される。全部で 24 回の繰り返しにより、紛争の輪郭が描かれ、米国が直面する主要な脅威について首尾一貫した厳密な図式が作成された。

(注3) エクスカーションケースには、最も可能性が高いとは言えないが、もっともらしいと思われる想定が含まれている。

結果

侵攻はいつも同じように始まる。開戦直後の砲撃で、台湾の海軍と空軍のほとんどが破壊された。中国海軍は強力なロケット部隊で台湾を包囲し、包囲された島への船や航空機の輸送を妨害する。何万人もの中国兵が軍の水陸両用船と民間のロールオン、ロールオフ船で海峡を渡り、航空攻撃と空挺部隊がビーチヘッドの後ろに上陸する。

しかし、最も可能性の高い「基本シナリオ」では、中国軍の侵攻はすぐに判明する。中国の大規模な砲撃にもかかわらず、台湾の地上軍は海岸線に流れ込み、侵略者は物資の補給と内陸部への移動に苦心する。一方、米軍の潜水艦、爆撃機、戦闘機、攻撃機は、しばしば日本の自衛隊によって強化され、中国の水陸両用艦隊を急速に麻痺させる。中国が日本の基地や米軍の水上艦船を攻撃しても、この結果を変えることはできない。台湾の自治は維持される。

ここには一つの大きな前提がある。台湾は抵抗しなければならず、降伏してはならない。米軍を投入する前に台湾が降伏してしまえば、あとは無益なことになる。

この防衛には、高いコストがかかる。日米両国は、何十隻もの艦船、何百機もの航空機、そして何千人もの軍人を失う。このような損失は、何年にもわたって米国の世界的地位を損ねることになる。台湾の軍隊は壊れることはないが、著しく劣化し、電気も基本的なサービスもない島で、傷ついた経済を守るために放置されている。中国もまた大きな打撃を受けている。海軍はボロボロで、水陸両用部隊の中核は壊れており、何万人もの兵士が捕虜になっている。

成功の条件

24回のゲームの繰り返しを分析した結果、中国の侵略に打ち勝つためには4つの必要条件があることがわかった。

  1. 台湾軍が戦線を維持すること。

    推奨すること 台湾の地上軍を強化する。中国軍の一部は必ず島に上陸するため、台湾の地上軍はいかなるビーチヘッドも封じ込め、中国の兵站が弱まったところで強力に反撃できなければならない。しかし、台湾の地上軍には大きな弱点がある。そのため、台湾は隊員を補充し、厳しい統合訓練を行わなければならない。陸上部隊は台湾の防衛努力の中心とならなければならない。

  2. 台湾に「ウクライナ・モデル」は存在しない。

    推奨すること:平時には、米台が協力して台湾に必要な兵器を提供しなければならない。戦時には、米国が台湾防衛を決定した場合、米軍は迅速に直接戦闘を行わなければならない。ウクライナ戦争では、米国と北大西洋条約機構(NATO)は、直接戦闘に部隊を派遣していないが、大量の装備と物資をウクライナに送っている。ロシアはこの陸路の流れを阻止することができなかった。しかし、台湾では中国が数週間から数カ月にわたって台湾を孤立させることができるため、「ウクライナ・モデル」を再現することはできない。台湾は必要なものをすべて持って戦争を始めなければならない。さらに、米国による遅延や中途半端な措置は、防衛を困難にし、米国の犠牲者を増やし、中国がより強力な宿営地を作ることを可能にし、エスカレーションのリスクを高めることになる。

  3. 米国は、日本国内の基地を戦闘行為に使用できるようにしなければならない。

    提言: 日本との外交・軍事関係を深める。他の同盟国(オーストラリアや韓国など)も中国との広範な競争において重要であり、台湾の防衛において何らかの役割を果たすかもしれないが、日本が要である。在日米軍基地の使用なしには、米国の戦闘機・攻撃機は効果的に戦争に参加することはできない。

  4. 米国は、中国の防御圏外から中国艦隊を迅速かつ大量に攻撃できるようにしなければならない。

    提言: 長距離対艦巡航ミサイルの兵装を増強する。スタンドオフ対艦ミサイルを発射できる爆撃機は、米国の損失を最小限に抑えながら侵略を撃退する最速の方法である。このようなミサイルを調達し、既存のミサイルをこの対艦能力で改良することが、調達の最優先事項である必要がある。

ピュロスのような勝利を避けるために

勝利がすべてではない。米国はピュロスのような勝利を収め、長期的には「敗れた」中国よりも多くの苦しみを味わうことになるかもしれない。さらに、高コストという認識は抑止力を弱めるかもしれない。もし中国が、米国は台湾防衛の高コストを負担したくないと考えるなら、中国は侵略の危険を冒すかもしれない。したがって、米国は、紛争が発生した場合に、勝利のコストをより低く抑えるための政策やプログラムを導入すべきである。そのような方策には次のようなものがある。

政治と戦略

  • 戦争計画の前提を明確にすること。戦前の台湾や中立国への派兵を前提とした戦争計画と、政治的現実の間にギャップがあるように思われる。

  • 本土攻撃の計画を立ててはならない。核保有国とのエスカレーションによる重大なリスクから、国家司令部が許可を出さない可能性がある。

  • 死傷者が多くても作戦を継続する必要性を認識すること。3週間で、米国はイラクとアフガニスタンでの20年間の戦争と比較して、約半分の死傷者を出すことになる。

  • 台湾の空軍と海兵隊を非対称にする。台湾は、「ヤマアラシ戦略」を採用するとのレトリックがあるものの、国防予算の大半を、中国がすぐに破壊してしまう高価な艦船や航空機に費やしている。

ドクトリンとポスチャー

  • 日本・グアムの航空基地を強化・拡充する。分散・強化により、ミサイル攻撃の影響を軽減する。

  • 地上での航空機の生存能力を高めるため、米空軍のドクトリンを改訂し、調達を再構築する。航空機の損失の90%は地上で発生している。

  • 中国本土の上空を飛行する計画を立ててはならない。中国本土の防空は強力であり、目標達成に時間がかかり、台湾周辺での航空任務が優先される。

  • 海兵隊沿岸連隊や陸軍多領域任務部隊の限界を認識し、その人数に上限を設ける。これらの部隊は中国に対抗するために作られたものであり、ある程度の価値はあるが、政治的、作戦的な困難からその有用性には限界がある。

  • 脆弱性を生むような危機的展開は避ける。軍事ドクトリンでは、危機の際に抑止力を高めるために前方展開することを求めているが、こうした部隊は魅力的なターゲットとなる。

兵器とプラットフォーム

  • より小型で生存性の高い艦船にシフトし、不具合のある艦船や複数の沈没に対処するための救助メカニズムを開発する。水上艦は非常に脆弱であり、ゲームの反復において、米国は通常2隻の空母と10~20隻の大型水上戦闘艦を失う。

  • 潜水艦とその他の海底プラットフォームを優先させる。潜水艦は中国の防衛圏に侵入し、中国艦隊に大打撃を与えることができましたが、数は十分ではありません。

  • 極超音速兵器の開発と配備を継続するが、ニッチな兵器であることを認識する。極超音速兵器はコストが高いため、在庫に限りがあり、膨大な数の中国空軍と海軍のプラットフォームに対抗するには数量が不足する。

  • 戦闘機よりも爆撃機の維持を優先させる。爆撃機の航続距離、ミサイルのスタンドオフ距離、高い搭載能力は、人民解放軍に困難な課題を突きつけた。

  • より安価な戦闘機を増産し、ステルス機の取得と非ステルス機の生産をバランスよく行う。紛争初期に多くの航空機が失われたため、空軍は戦闘機・攻撃機が不足し、損失を維持できる十分な戦力がない限り、紛争の二の舞になる危険性がある。

最後に、このプロジェクトとその提言には、いくつかの注意点がある。侵略のモデル化は、それが不可避である、あるいは可能性が高いということを意味するものではない。中国指導部は台湾に対し、外交的孤立、グレーゾーンでの圧力、経済的強制といった戦略を取るかもしれない。仮に中国が軍事力を選択したとしても、それは完全な侵略ではなく、封鎖の形を取るかもしれない。しかし、侵略のリスクは十分に現実的であり、破壊的な可能性があるため、分析する価値はある。

このプロジェクトは、台湾防衛のメリットが将来のコストを上回るのか、あるいはそのコストとメリットをどのように比較検討するのか、といった立場をとるものではない。むしろ、この重要な国家安全保障上の課題に対して、国民がより良い情報を得た上で意思決定できるようにするために、国民的議論を深めることを目的としている。

2023年2月2日木曜日

台湾有事①:台湾問題と中国共産党第20回大会

台湾危機が叫ばれているが、習近平政権は台湾を武力統一する方針を持っているだろうか。武力統一をするならいつどんな状況の下で実行するだろうか。以下は中国共産党第20回全国代表大会報告の台湾に関する一部である。それを読むと必ずしもそのような方針を持ってはいないと読める。武力統一に乗り出すかもしれないのは、台湾が中国からの独立を鮮明にして、台湾も憲法で認めている一つの中国から逸脱するときがきたら、ということだ。中国のこれほどの基本文書で決めたことを大嘘をつくことがあるだろうか。そうならまず第一に中国国民に対する裏切りであるし、近隣諸国や世界全体に対しても裏切ることになってしまう。そのような政権は持たないだろう。以下にその部分を示す。

過去5年間の総括の部分

一 過去五年の活動と 新時代の一〇年の偉大な変革

揺れ動く香港の情勢を前に、われわれは特別行政区に対する全面的な管轄統治権を憲法と基本法に則って効果的に運用し、香港特別行政区国家安全維持法を制定・実施し、「愛国者による香港統治」の原則を徹底したことで、香港の情勢が混乱から安泰へと大きな転換を遂げた。粤港澳(広東・香港・澳門)大湾区建設をいっそう進め、香港と澳門の経済発展、民生改善、安定維持を支援した。「台湾独立」勢力による分裂活動と外部勢力による台湾の事柄への干渉というゆゆしき挑発を前に、われわれは徹底して分裂反対・干渉反対の重要な闘争を展開し、国家の主権と領土保全を守って「台湾独立」に反対するわれわれの確固たる決意と強大な能力を示し、祖国の完全統一を実現する戦略的主導権をいっそう強く握り、一つの中国を認める国際社会の枠組みをいっそう強固なものにした。国際情勢の急激な変化を前に、とりわけ外部からの威嚇、抑制、封鎖、極限の圧力を前に、われわれは国益を重視して国内政治を優先させることを堅持し、戦略的不動心を保ち、闘争精神を発揚し、強権を恐れないという確固たる意志を示し、闘争の中で国家の尊厳と核心的利益を守り、わが国の発展と安全の主導権をしっかりと握った。この五年、わが党は人民を団結させ率いて、長年解決できなかった数多くの難題を克服し、未来にかかわる数多くの大事・要事を成し遂げ、党と国家の事業において世界の注目を集める大きな成果を収めた。

われわれは「一国二制度」の実践を全面的かつ正確に推し進め、「一国二制度」、「香港住民による香港統治」、「澳門住民による澳門統治」、高度の自治という方針を堅持し、香港が「混乱から安泰へ、安泰から興隆へ」の新段階に入るよう推し進めて、香港、澳門は長期的で安定した発展という好ましい状態を保った。われわれは新時代における台湾問題解決の基本方策をうち出し、両岸の交流・協力を促し、「台湾独立」分裂活動に断固として反対し、外部勢力からの干渉に断固として反対し、両岸関係の主導権と主動権をしっかりと握った。

続いてこれから5年間の方針の部分。

一三 「一国二制度」を堅持・祖国の統一を推進する

「一国二制度」は中国の特色ある社会主義の偉大な壮挙であり、祖国復帰後の香港・澳門の長期的な繁栄・安定を保つ最善の制度的取り決めであるため、長期的に堅持しなければならない。

 

「一国二制度」、「香港住民による香港統治」、「澳門住民による澳門統治」、高度の自治という方針を全面的かつ正確に、揺るぐことなく貫徹し、法に基づく香港統治・澳門統治を堅持し、憲法と基本法で定められた特別行政区の憲制秩序を守る。「一国二制度」の制度体系を堅持・整備し、中央の全面的な管轄統治権を徹底し、「愛国者による香港統治」と「愛国者による澳門統治」の原則を徹底し、特別行政区の国家安全維持のための法律・制度と執行メカニズムをしっかり運用する。中央の全面的な管轄統治権と特別高度な自治権の保障の統一を堅持し、行政主導を堅持し、特別行政区の行政長官と政府による法に基づく施政を後押しし、全面的統治の能力と管轄統治向上させ、特別行政区の司法制度と法律体系を整備し、香港・澳門の資本主義制度と生活様式を長期的に保ち、香港・澳門の長期的な繁栄・安定を促進する。

 

香港・澳門が経済発展、民生改善をはかり経済・社会の発展における根深い矛盾と問題を解決するよう後押しする。香港・澳門の優位性と特徴を発揮させ、国際金融や貿易、水運・航空、イノベーション・科学技術、文化・観光などの分野における香港・澳門の地位をうち固め向上させ、香港・澳門と各国各地域とのより開かれた、より緊密な交流・協力を深化させる。粤港澳大湾区建設を推進し、香港・澳門が国家の発展の大局にいっそう融け込み、中華民族の偉大な復興の実現のためによりよく役割を果たすようサポートする。

 

祖国を愛し香港を愛し澳門を愛する勢力をいっそう拡大し、香港・澳門の同胞の愛国精神を高め、「一国二制度」を支持するより幅広い国内外の統一戦線を結成する。中国反対・香港撹乱・澳門撹乱勢力を断固として取り締まり、香港・澳門の事柄に対する外部勢力からの干渉を断固として防ぎ、食い止める。

 

台湾問題を解決して祖国の完全統一を実現することは中国共産党の確固不動の歴史的任務であり、すべての中華民族の人々の共通の願いであり、中華民族の偉大な復興を実現する上での必然的要請である。新時代における党の台湾問題解決の基本方策の貫徹を堅持し、両岸関係の主導権と主動権をしっかりと握り、祖国統一の大業を揺るぐことなく推進する。

 

「平和的統一、一国二制度」の方針は両岸の統一を実現する最善の方式であり、両岸の同胞および中華民族にとって最も有利である。われわれは一つの中国の原則と「九二年コンセンサス」を堅持し、それを踏まえて、台湾の各党派、各業界、各階層人士と、両岸関係・国家統一について幅広く踏み込んで協議し、共同で両岸関係の平和的発展と祖国の平和的統一のプロセスを推進していく。広範な台湾同胞との連帯を堅持し、祖国を愛し統一を目指す台湾島内の人々を揺るぎなく支持し、共同で歴史的大勢を把握し、民族の大義を堅持し、「台湾独立」に断固反対し祖国統一を揺るぐことなく促進する。偉大な祖国は永遠に祖国を愛し統一を目指すすべての人々の強固な後ろ盾である。

 

両岸同胞は血のつながった「血は水よりも濃い」家族である。われわれは終始台湾同胞を尊重し思いやり、彼らに幸福をもたらしている。引き続き両岸の経済・文化の交流協力を促進し両岸の各分野の融合発展を深化させ、台湾同胞の福祉増進につながる制度と政を充実させ、両岸がともに中華文化を発揚するよう推進し、両岸同胞の心の通い合いを促すことに力を注いでいく。

 

台湾は中国の台湾である。台湾問題の解決は中国自身のことであるため、中国人自身で決めるべきでる。われわれは、最大の誠意をもって、最大の努力を尽くして平和的統一の未来を実現しようとしているが、決して武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必な措置をとるという選択肢を残す。その対象は外部力からの干渉とごく少数の「台湾独立」分裂勢力おびその分裂活動であり、決して広範な台湾同胞に向けたものではない。国家統一・民族復興という歴史の輪は着々と前へ進んでおり、祖国の完全統一は必ず現しなければならず、必ず実現できるのである。

 

文章を読むとわかるように、習近平政権がいう「一国二制度」は、統治権は北京政府が持つが、その許容範囲で自治を認める、ということ。中国という一つの国が内部に並立する2つの政権を認めるということでは全くない。香港はその方針に基づいて対処し、民主主義を主張する勢力を弾圧して一掃した。これでは台湾の人々が受け入れるわけがない。しかし、香港でやったように警察力や武力をもって台湾を平定しようという方針ではない。文章からは、台湾との統一は台湾の各党派・各業界・各層との合意形成をし、経済的なつながりを重視して、平和的な統一を目指すことを述べている。ただし、中国からの台湾の独立を主張する一部の勢力には反対し、彼らの動向によっては武力統一の排除はしない。台湾で独立派と目されている人は全体の2割以下ほどしかいないし、全体の8割に近い台湾の人々は現状維持を望んでいるので、習近平政権が近々台湾の武力統一をするだろう、などというのは虚妄としか言いようがない。尤も台湾に対する経済的な浸透は習近平政権になってからは必ずしも思惑どおりにはない出来ていない、という指摘が研究者から出ている。台湾を「一国二制度」のもとに中国に組み入れたいと中国は考えているが、だからと言って習近平政権が武力をもってすぐにでも台湾を武力統一しようとしている、という情報はいったいどこから出てきたのだろうか。

「ここで思い出すのは2021年の日米首脳会談の前の3月、前米インド太平洋軍司令官のデービッドソン海軍大将が米上院軍事委員会で、『中国軍が27年までに台湾に侵攻する可能性がある』とあらためて述べた証言。証言時期から判断すれば、その狙いが、日米首脳会談に向けて台湾有事を緊急課題にし、日米安保の性格変更の「地ならし」と、対日世論工作にあったことが分かる。」(岡田充) 一般の人が知らない軍事機密情報に見せかけて、ありそうもない台湾危機をでっち上げて発表したと思われることだ。日本の政権側もそれに乗って国内向けに台湾危機を言い募り、「それは大変なことだ」と国民に思わせ、敵基地攻撃体制をつくる大軍拡に乗り出した。しかも日本側がそのようなコメントを出すように米国側、米軍側に嗾けたのではないかとさえ疑われる。このような謀略に対してはかつての柳条湖事件や*トンキン湾事件、イラク戦争などが想起される。だからむしろ、アメリカと日本が中国との戦争を嗾けることのほうがありそうに思う。

*柳条湖事件:1931年9月18日夜、中国東北部の奉天(今日の瀋陽)近郊の柳条湖付近で南満州鉄道(満鉄)の線路を関東軍がみずから爆破したのを、中国軍の仕業と謀略的にウソをいい、それを機に中国軍を襲った事件で、日本が中国東北部への侵略(満州事変)を始めたきっかけになった。

*トンキン湾事件:1964年8月、北ベトナム沖のトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇がアメリカ海軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したとされる事件。これをきっかけに、アメリカは本格的にベトナム戦争に介入、北爆を開始した。しかし後の1970年にこの事件はアメリカが作り上げた虚偽であることが判明した。

*イラク戦争:アメリカが主体となり、2003年3月20日からイギリス、オーストラリア、ポーランドが加わる有志連合によって、サダム・フセインのイラクが大量破壊兵器を保持しているとして武装解除をするという理由を建てて『イラクの自由作戦』の名の下に、イラクへ侵攻したことで始まった軍事介入。イラクには大量破壊兵器などなかったことが後に判明。

自由航行作戦と称して台湾海峡をアメリカの艦艇が通行したり、ペロシ下院議長やアメリカの議員団が台湾を訪問するなどしている。それに対して中国軍も台湾の周りで軍事演習をして応戦しているが、台湾の民意はどうなっているのだろうか。